モンテッソーリ教育は世界的に注目されている。なにせ、著明人をあげればキリがない。

ウィリアム王子 & ジョージ王子(イギリス王室)
ジェフ・ベゾス(Amazon.com共同創設者)
セルゲイ・ブリン & ラリー・ペイジ(Google共同創設者)
バラク・オバマ(アメリカ前大統領)
ビル・ゲイツ(マイクロソフト創設者)
ピーター・ドラッカー(経営学者)
マーク・ザッカーバーグ(Facebook創設者)
…
などなど
世界を席巻しているGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)のApple以外に関連するなんて、本当か!と思ってしまいそうです。
そもそも、モンテッソーリ教育て何?かということですが、モンテッソーリは人です。
モンテッソーリはイタリア初の女性医師で100年以上前に生きていた人です(1870年8月31日 – 1952年5月6日)。この方が提唱したのがモンテッソーリ教育となります。当時は女性差別が残る時代であったため、なかなか職が見つからず精神病院で勤務。そこで知的障害児との出会いがモンテッソーリ教育へとつながったと言われています。

モンテッソーリ教育について名前は聞いたことあるけど、どんな教育なの?という方は、下の別記事も参照ください。
【レビュー】モンテッソーリ教育を学ぶ、5人子育て中の父ー見守ることが大事ー
そこで、今回はモンテッソーリ教育って実際はどうなの?と気になっていたところ、2021年に気になる論文が発表されていたので読んでみました。

2021年、Frontiers in Psychology誌、米国バージニア大学からの発表となります。拙い日本語はご容赦ください。原文が気になる方は下記、リンク先よりFreeでご自身で確認いただけます。
An Association Between Montessori Education in Childhood and Adult Wellbeing



<論文の概要>
Wellbeing(幸福感)、すなわち人々が自分の人生についてどのように考え、感じるかは幸福や長生きといった人生の重要な点を前もって示している。モンテッソーリ教育の特徴は、Wellbeing(幸福感)を高めることである。そのWellbeing(幸福感)にはその教育を受けている時期や将来について①自分自身で決定すること、②意味のある【お仕事】、③社会生活の安定性なども含まれている。

①自分自身で決定すること
モンテッソーリの教室では子どもたちは、多くの場合自分でやること(仕事)を自分で選びます。このことが意味するのは、自分自身の教育を自分に課しているということです。教諭は個人レッスンや少人数のグループレッスンを指導しますが、教諭がどのレッスンをフォローするか、あるいはレッスンに同席するかどうかまで、子どもたちが自分で決めます。教室には、棚に並べられた何百もの教具があり、子どもたちはその中から選択し、さらには、教室を出て他のことをするための散歩を自ら考える(Montessori, 1967/1995; Lillard, 2017)

自分自身で決定することは、自主性という人間の基本的な欲求を満たすものとして考えられてきた(Deci and Ryan, 2011)。選択することとその結果、主体的に自分で選んでいる感覚は、強い本質的な動機、自己満足感、幸福感、有能感を前もって表出していることが示されてきた(Langer and Rodin, 1976; Ryan and Grolnick, 1986; Rovee-Collier and Hayne, 2000; Patall et al., 2008, 2010)、自己決定力が高い個人主義の国に住んでいると国レベルでのWellbeing(幸福感)も予測する(Rhoads et al., 2021). 自分自身で決定と関連したところでは、モンテッソーリ教育には成績やテストがない。外からの報酬が与えられたりや評価されることは、外からの操られる感覚を与える(Ryan and Deci, 2000)、そのためそれらがないことで自分のコントロールの仕方と自分自身で決める感覚が得られることが研究で示されている(Lillard, 2017, Chapter 6)。また、課題を行うことで外から報酬が与えられると、人はより簡単な課題を選び(Harter, 1978)、挑戦を避ける傾向がある。
我々は、自分自身で決定することが2つの成果をもたらす可能性があると仮説をたてた。1つ目は、一般的なWellbeingと呼ばれるもので、幸福感、人生の意味の発見、自信、そして(関連して)個人的な能力に関するものである。人生の早い時期に高度なことに自分自身で決定する経験した人は、その後、より本質的な活動し、より多くの挑戦を求めるようになるかもしれません。モンテッソーリ教育における自分自身で決定することがこのような一連の成果をもたらすかもしれないという考えを裏付けるように、ある経験をもとにした研究では、モンテッソーリの中学生は、従来の教育を受けた生徒よりも、ポジティブな感情、「フロー」(Csikszentmihalyi、1997)の経験、効力感、内発的動機について高い評価を得た(Rathunde and Csikszentmihalyi、2005a)。我々がたてた仮説は、モンテッソーリ教育を受けたことのある大人は、自信を含む一般的なWellbeingが高く、チャレンジを求め、仕事に没頭する傾向が強い、ということだった。
②意味のある【お仕事】

モンテッソーリは、子どもたちに意味のある【お仕事】を与える。意味のある【お仕事】は、根本的な理由が明確であるため、人に目的意識を持たせることができる活動を意味します。意味のある【お仕事】を提供することは、自分自身で決定すること(Lillard, 2019)を原則とする学校システムにとって極めて重要であり、なぜなら意義はやる気のもとになるからである(Bruner, 1990)。幼稚園の前の段階で、モンテッソーリの子どもたちは、食事の準備、配膳、片付け、教室の手入れ、服のボタン付けなど、幼児にとって意味のある【お仕事】を学びます。研究によると、子どもたちは、【お仕事】に目的があることを好むため、そうした【お仕事】をするふりをするよりも本当にすることを好みます(Taggart他、2018、2020年)。モンテッソーリでは、数字のような抽象的な概念を学ぶとき、その抽象的な概念が何であるかを明らかにする具体的な材料を使います。これは、例えば、27個のブロックで構成された立方体を使うと、なぜ3つの項目の掛け算が立方体の面積を与えるのかが明確になります:それぞれのブロックは、式の要素を表しているのです。3つのブロックがそれぞれ長さA、B、Cのすべての辺を持ち、3がa2bに対応するというように、ブロックのセットを組み合わせると、なぜ3項式が成り立つのかがわかります。さらに、モンテッソーリ教育の生徒は、自分の興味のある【お仕事】を追求することができ、それはもちろん、個人的に意味のある【お仕事】にもつながります。適切なレベルに調整された【お仕事】、つまり頑張ればできる【お仕事】は、人を夢中にさせ、「フロー」と呼ばれるポジティブな状態にします(Csikszentmihalyi, 1997)。意味のあるお仕事を選べ、(成績のような)報酬が与えられない自由な環境では、人は中間レベルの課題を選ぶ傾向がある(Danner and Lonky, 1981; Dweck, 1999; Simon, 2001; Kidd et al, 2012, 2014)-中間レベルとは、何も学べないほど簡単ではなく、欲求不満で倒れるほど難しくない(つまり学ばない)レベルのことである。
このように考えると、子どもたちが自分で仕事を選ぶということは、仕事が有意義であるということであり、理論的にはモンテッソーリの学校におけるより高いレベルのお仕事をする際に支えることになるはずである。前述の研究もこのことを示唆している(Rathunde and Csikszentmihalyi, 2005a)。モンテッソーリの中学生たちは、他の生徒たちよりも集中力を感じていると報告した。また、集中は一般的なWellbeingを増加させる(Lewis et al., 2011)ので、ひいては意味のある【お仕事】も一般的なWellbeingを増加させるかもしれない。我々の仮説では図1に示すように、モンテッソーリの教室では、おそらく自分の【お仕事】が有意義であることで、研究によって示されたように集中力が増す、そしてそのことが生涯を通じて活動への集中力の増加につながると考えた。また、学生時代に有意義な活動をすることで、人生の意味や幸福感を感じるようになり、一般的なWellbeingと関連するのではないかと予想した。
③情緒や人間関係の安定性

モンテッソーリ教育のもう一つの特徴は、社会生活での情緒の発達と持続的な人間関係を育む社会環境です。教室は3年間(例えば6歳から9歳、9歳から12歳、高校まで)同じ先生と同じ仲間に囲まれ、年長と年少の子どもは1-2年間クラスメートとなり、教室のレベルが上がると再び出会うことになります。同じ先生やクラスメートと一緒にいることを「looping」と呼び、ポジティブな人間関係、自信、学業成績を支えることになる(Burke, 1996; Little and Dacus, 1999; Cistone and Shneyderman, 2004; Nitecki, 2017; Hill and Jones, 2018)。学業成績は良くなるが人間関係は良くならないことを1つの研究(Tourigny et al.2020)は示した。モンテッソーリや他のいくつかの研究が3年間loopingをするのに対し、2年間しかloopingしていない;3年間looping(対2年間のlooping)は関係の質に違いをもたらすかもしれない。良好な学業成績は、後々のWellbeingも予測する(Ngら、2015;Steinmayrら、2016)。モンテッソーリの子どもたちがそうであるように、無学年制の多年齢教室(例えば、「1年生」が特定されない教室)にいることも、学業の結果と社会生活での情動の両方に特に有益である。そして、そのような教室での時間が長く過ごせば過ごすほど、その効果は高まる(Lloyd, 1999)。

モンテッソーリ教育では、成績やテストがないため、教師や仲間との関係に利点があります。教師は、評価して「成績」をつける人ではなく、指導者になる。生徒間でテストや成績評価がないことは協調性をうむが、成績評価が競争を生む(Butler and Ruzany, 1993)。協調性そのものがモンテッソーリ教育が成人したあとの高い幸福感という社会的側面と関連しているかもしれないと思われるもう一つの理由である。モンテッソーリ教室では、特に6歳以降、子どもたちは常に協力し合って学業を行い、社会性を養うことが期待される。モンテッソーリ教育での年長者は、自分でやることを決めた小グループ散歩に出かけたり、教室の規則を(グループで)作ったりすることがよくあります。中学生や高校生になると、モンテッソーリの教室では一緒に長い遠足に行くかもしれません。これらの実践は、より大きな社会的結束を育む可能性があります。

モンテッソーリ教育における子どもと教諭の関係性を調べた有用な研究がないのは知っているが、モンテッソーリ教育において仲間との関係性はより強くなることを示している証拠はある。これは当然で、従来の学校では生徒は通常個人で仕事をするのに対し、モンテッソーリの学校では生徒はしばしば小グループで仕事をするからである。さらに、モンテッソーリの生徒の社会的知識やスキルはより高度であり、全体的な学校の雰囲気はより良いという研究結果もある(Flynn, 1991; Rathunde and Csikszentmihalyi, 2005b; Lillard and Else-Quest, 2006; Lillard et al, 2017; Denervaud et al, 2020a)。ランダムにくじ引きをおこなった研究でも、モンテッソーリでは学力が高いことが示されており(Lillard and Else-Quest, 2006; Lillard et al., 2017)、よく調整されたマッチング/グロース研究(Culclasure et al., 2018; Denervaud et al., 2019など)からはモンテッソーリ教育が学力向上につながることが示唆されている。より高い学力は、より高い幸福につながることが示されており(Ngら、2015;Steinmayrら、2016)、おそらく自尊心の向上を介して(Yangら、2019)、よりポジティブな関係やコミュニティの感覚を強化するのだろう。社会的安定性に関する知見を総合すると、モンテッソーリの生徒は生涯を通じてよりポジティブな社会的関係とより強いコミュニティ感覚を持つだろうと予測された(図1参照)。このような要素は基本的には一般的なWellbeingと関連しているため、モンテッソーリ学校での強い社会的安定は、後々に高い一般的Wellbeingにつながる可能性もある。

研究方法
18歳から81歳(M=36)の成人1905人を対象に、2歳から17歳までの各年に通った学校の種類を含む人口統計学的情報をもとに幸福感スケールを記入させた。対象者の約半数は従来型の学校にしか通ったことがなく、残りは2年から16年間(M=8年)モンテッソーリ教育を行っている学校に通ったことがある。変数を減らすために、まず、調査データを使ってWellbeing(幸福感)の測定モデルを開発し、さまざまな分析を行うと、4つの因子(一般的Wellbeing(幸福感)、没頭する、社会的信頼、自己信頼)に到達した。年齢、性別、人種、幼少期のSES、私立学校の在籍年数を考慮し各々の構造の違いを均一化したモデルでわかったことは、少なくとも2年間モンテッソーリ教育を受けたことが、4つの因子すべてにおいて成人したあとのWellbeing(幸福感)が有意に高いことと関連することだった。

2つ目の分析は、モンテッソーリ教育を受けた子供と通常の教育を受けた子供とはにの幸福度の差が存在するということである。幸福度の差はモンテッソーリ教育を受けた子供と私立学校にのみ通学していた子供たちとの間にも見られた。
3つ目の分析では、モンテッソーリ教育を受けた年数が長いほど、大人になってからのWellbeing(幸福度)が高いことがわかった。
この結果は、我々が選んだ測定できる因子では説明できないのかもしれない。そうであるなら、モンテッソーリの学校教育に関連する、どんな新たな因子が成人になったときWellbeing(幸福感)をもたらすのか、研究によって明らかにされるべきである。本研究における、その他のいくつかの限界についても考察はしている。これらの限界には対処する必要がある。しかし、子どもをモンテッソーリ教育機関に無作為に割り当てる研究など、他の研究との組み合わせにより、本研究が示したのは、子どもの頃にモンテッソーリ教育を受けたことが、大人になったときのWellbeing(幸福感)を高くする要因になっているかもしれない、ということである。
結論

いかがだったでしょうか?
少し感じたことは、日本で保育園の見学に行くと、『うちはモンテッソーリ教育をとりいれています』と仰るのを良く耳にします。
しかし、モンテッソーリ自身が重要と考えていた点に
教師の質、があります。モンテッソーリ教諭は認定されている機関で必要とされる課程を修了し、試験に合格するとモンテッソーリ資格免許が与えられた人。
となると、『モンテッソーリ教育を取り入れている』はどこまでどうなの?有効なの?という疑問がわきます。厳密すぎますかね…

ざっくり言ってしまうと、モンテッソーリ教育は大人になって効いてくる。モンテッソーリ教育をうけたことが、大人になってからのWellbeing(幸福感)をもたらしてくれる要因になるかもしれない。
まぁ、あまり科学的ではない分野にエビデンスなどを持ち込むと話がややこしくなります。お気楽にエッセンスだけでも、と興味を持たれた方はモンテッソーリ教育を踏まえた「ほめ方」「しかり方」などはどうでしょうか。こちらの記事で紹介しています。
【レビュー】モンテッソーリ教育に興味あるパパに<自分でできる子に育つ「ほめ方」「叱り方」>
『いや、理論はいいんだよ、モンテッソーリ教育を実際にはどうやるんだろう?、少しやってみたいな』と思われた方は下の記事も参考にしてみてください。
【実践版】モンテッソーリ教育で才能をぐんぐん伸ばす<0~1歳編>を読んだ父
最後まで読んでいただきありがとうございます。Let’s enjoy 子育て
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